REVIEW

いよいよ完結編! クリストフ・フェレラ『ミロの世界』第2巻レビュー


以前、BDfileでも取り上げて話題となった
日本在住のアニメーター兼BD作家、クリストフ・フェレラさんの最新作
ミロの世界』の完結編となる第2巻が、今年9月に発売となりました。

131113_01.jpg ミロの世界 2巻
Le Monde de Milo, T2


[著者] Richard Marazano, Christophe Ferreira
[出版社] Dargaud

そこで今回は、前回に引き続き翻訳者の原正人さんに
この『ミロの世界』第2巻をレビューしていただきました!
その前に、第1巻のあらすじは前回の記事からどうぞ)



* * *


リシャール・マラザーノ作、クリストフ・フェレラ画『ミロの世界』の第2巻が2013年9月に刊行された。


クリストフ・フェレラは今年10月に行われた第2回海外マンガフェスタのアーティスト・アレイに出展し、『ミロの世界』を販売していたので、もしかしたらその場でこの本を購入したという方もいるのではないだろうか。クリストフ・フェレラ本人については、以前BD研究会に彼を招いたときの様子を、BDfileで数回に分けて紹介しているので、ぜひそちらをご覧いただきたい〔記事下部、《関連記事》参照〕。アニメーターとしてフランスと日本で長く活躍し、この『ミロの世界』で初めてBDに挑戦した期待の新人BD作家である。


さて、さっそく『ミロの世界』第2巻に目を移そう。第1巻で湖の反対側の世界に迷い込んでしまった主人公のミロは、思いもよらぬ冒険に巻き込まれてしまう。第2巻の表紙には、彼の苦難を暗示するかのように、第1巻とは対照的な不穏なオレンジ色が使われている。

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▲『ミロの世界』第1巻、第2巻 表紙


第2巻のストーリーは以下の通りである。

湖を通り抜け、反対側の世界に迷い込んだミロは、その世界の住人たちに捕えられてしまった。

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▲気づくとミロは湖の反対側の世界に迷い込んでいた 〔第1巻P36〕

やがてミロは解放されたものの、魔法使いと呼ばれる人物によって送り込まれた巨大な怪物アクソトルたちの攻撃を受け、人々が住む村は壊滅状態に陥ってしまう。

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▲アクソトルによって壊滅状態に陥る村 〔第1巻P53〕

村が襲われたのはミロとヴァリアのせいだと言って、村人たちは二人を追放する。

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▲村を追われるミロとヴァリア 〔第2巻P4〕

ミロにはわけがわからないが、ヴァリアは事情を知っている様子である。二人が森へと逃げ込むと、村の少女ミンディがミロを慕って、彼らの後を追う。
一方、村には、ミロとヴァリアを探して、魔法使いの命を受けた頭巾の怪人物たちがやってきていた。二人が村を出たと知ると、彼らは二人を追って、森の中に入り込む。ミロとヴァリアは彼らをやり過ごすことに成功するが、ミンディが捕まってしまう。
突然姿を消したミンディを心配して村を飛び出してきたミンディの父ゾングが加わり、一行は、ミロとヴァリアをこの世界に導いた金色の魚を探して、湖を訪れる。

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▲怪人物たちに捕えられたミンディと、彼女を探すゾング 〔第2巻P11〕

しかし、その場所で彼らを待っていたのは魚だけではなく、一人の女性も一緒だった。彼女は、驚いたことに、ミロの母親であることを告げる。

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▲ミロの母親 〔第2巻P14〕

母親は死んだはずだと、なかなか信じようとしないミロに、彼女は昔話を語る。
もともと湖のこちら側に生まれたミロの母親は、特殊な力を持つ家系に属していた。幼い頃、湖で遊んでいた彼女は、ある日、ミロと同じように金色の魚に導かれ、湖の反対側を訪れると、ミロの父親と出会う。歳月が経ち、成人すると、二人は結ばれ、やがてミロが生まれる。時を同じくして、湖のこちら側とあちら側でさまざまな交流が生まれる。すべての住人が自由に行き来できるわけではない。境界を越えることができるのは、特殊な能力を持った人々だけだった。

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▲ミロの母親が語るかつての幸福な時代 〔第2巻P17〕

当初は幸福な関係が営まれていたが、やがて、湖のこちら側で、一部の能力を持った人々が、持たない人々を搾取し始める。それは戦争に発展し、尊い命が失われていった。その戦争のさなかに、献身的に人々に尽くしていた男が妻を亡くす。それこそ後に魔法使いと恐れられることになる人物で、ショックのあまり錯乱した彼は、生き残った人々に苛烈な攻撃を加え始める。

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▲妻を失った魔法使いは村人たちを攻撃し始める 〔第2巻P19〕

彼の力を抑え込むために、ミロの母親は、幼いミロを父親に託し、湖のこちら側にとどまらざるをえなかった。長い年月が過ぎたが、事態は解決しない。ミロの母親は、この世界に安寧を築くため、潜在的な力を持つミロの助けを必要としていた。それを察知した魔法使いは、事前に阻止するために追手を放ったのだった。実は、ヴァリアは魔法使いの娘で、彼女がミロの近くに現れたのもそのことと無関係ではなかった......。

ミンディを取り戻し、この世界の平和を取り戻すべく、一行は魔法使いのもとに向かう。はたしてヴァリアはどちらの側につくのか? 一行の運命やいかに?

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▲仲間たちとはぐれ、魔法使いに翻弄されるミロ 〔第2巻P28〕

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▲ミロ一行と魔法使いの最終決戦 〔第2巻P49〕


まだ邦訳の予定は決まっていないようだが、『ミロの世界』はすでにフランスで高い評価を受けている。さまざまなフェスティヴァルでさまざまな賞を受賞しているのに加え、『ジュルナル・ド・ミケ(=ミッキー・ジャーナル)』という子ども向け雑誌の読者グランプリも受賞している。もうそろそろ来年1月末から2月にかけて行われるアングレーム国際漫画祭のノミネート作品が発表されるはずだが、この作品がさらにこのアングレームの子ども向け作品賞にノミネートされる可能性もかなり高いだろう。今後の発表を楽しみに待ちたい。


『ミロの世界』を描き終えたクリストフ・フェレラは、現在、次回作『アルキュオネ(Alcyon)』を執筆中とのこと。原作は『ミロの世界』と同じリシャール・マラザーノである。古代ギリシアを舞台に、男の子と女の子の2人組が、両親と村を救うためにギリシア中を駆け巡る物語だそうだ。彼らは聖なる品物を探し求める過程で、さまざまな怪物や神々と出会うことになる。順調にいけば、第1巻は2014年4月刊とのこと。クリストフ・フェレラの今後のさらなる活躍を楽しみにしていただきたい。


(Text by 原正人)



《関連記事》

【BD研究会レポート】日本在住のアニメーター兼BD作家クリストフ・フェレラ氏を迎えて①
【BD研究会レポート】日本在住のアニメーター兼BD作家クリストフ・フェレラ氏を迎えて②
【BD研究会レポート】日本在住のアニメーター兼BD作家クリストフ・フェレラ氏を迎えて③

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