翻訳家、日仏コーディネーターとして活躍されている
鵜野孝紀さんが不定期でお届けする現地のBD最新事情!
今回は、近年フランスで増えてきているという
BDの朗読会についてです。
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今年の6月27日、パリのメゾン・ドゥ・ラ・ポエジ(Maison de la Poésie)で
BDの朗読会が行われた。
日本でも詩や小説の朗読は珍しくないが、
フランスでは近年BD作品の朗読会が行われる機会が増えている。
それでも、メゾン・ドゥ・ラ・ポエジのような本来文芸作品に特化した会場で
BDの朗読が行われるのはさらに新しい動きだ。
自身もBD作家であるシャルル・ベルベリアンが音頭を取り、
今回で3回目の開催となった本イベントでは
数人の作家が自身のBD作品を朗読、作品のヴィジュアルなし、というのが唯一のルール。
あとは何をしようと作家の自由に任される。
ギターを持ち込んで合間に歌を披露したり、作品のテーマに関連した他の本を紹介するなど、
単なる朗読会の枠を越えて自由な表現空間となっている。
シャルル・ベルベリアン(Charles Berberian)は、
『Cinérama(シネラマ)』を朗読。
▲お気に入りのヘンな映画について語ったコミックエッセイ集
ペネロープ・バジュー(Pénélope Bagieu)が
『Cadavres exquis(優雅なゴースト)』を。
▲引きこもりの流行作家と出会ったごく平凡なヒロインがたどる数奇な運命。
2011年アングレーム国際漫画祭でSNCF(フランス国鉄)賞を受賞。
ジャン=クロード・ドゥニ(Jean-Claude Denis)は
『Nouvelles du monde invisible(短編集・見えないものたち)』を。
▲2012年アングレーム国際漫画祭グランプリ作家による、香りをテーマにした短編集。
リュペールとミュロ(Florent Ruppert et Jérôme Mulot ※ )は
『Panier de singe(猿のカゴ)』を朗読した。
▲動物の性生活を追うカメラマン2人組の奇妙な冒険。
ユニークな作風が評価され、2007年アングレーム国際漫画祭の新人賞を受賞。
実際に、BDの朗読会がどのような雰囲気で行われているのか、
参考までに、以前BDfileでもご紹介したBD作家リアド・サトゥッフが
2010年に行った朗読会の模様をご紹介しよう。
[参考]
BD作家リアド・サトゥッフが2010年に行った朗読会の動画(仏語・字幕なし)
二人の女優(ヴァレリー・ドンゼッリとロール・マルサック)と
『La vie secrète des jeunes(若者達の密かな生活)』を朗読。
イマドキの若者の話し言葉をまねているのが、フランス語は分からなくても伝わってくる。
セリフやテキストの多いBDだから成り立つパフォーマンスであるとも言えるが、
日本におけるマンガとはまた違った
フランスでのBDの立ち位置を示す事例として面白いのではないだろうか。
Text by 鵜野孝紀