物語を読み終えようとするとき、どうしても話をそこで終わらせたくないと思うことがある。それほど読者はその書物の世界にどっぷり浸かってしまうのだ。それはまた、物語のなかには居場所を持てなかったいくつかのイメージをまとめる機会にもなりうる。白黒で描いたイメージは、完成した作品とはっきりとしたつながりがある。反対に、白黒で表現するときとは別の感情を喚起するため、カラーで描いたイメージもある。この物語では白黒が重視されているが、それはかつて存在した伝説の機関車の話だということや、石炭の黒さやボイラーの蒸気を読者に感じてもらうことで、鉄道員という職業の厳しさを表現するためだ。白黒で描くとなると、極めて高い技術や表現主義に比せられるべきクオリティが要求されるが、おそらくそれが漫画家という職業の核心に少しでも近づくことにつながるのだろう。