さて、前回に引き続きアングレーム国際漫画祭の現地レポートの後編をお送りします。
後編は、「BD作家編」です。
超大御所から新進気鋭の注目アーティストまで
話題・人気のBD作家さんを一挙ご紹介!
......と、本来なら1回でご紹介する予定だったのですが、
記事をまとめているうちに、1回ではご紹介しきれなくなってしまいました。
やむをえず、<part1>、<part2>と、2回に分けてご紹介したいと思います。
(※ややこしいので、この際タイトルも前編・後編ではなく、「会場案内編」「BD作家編」と改めました)
というわけで「BD作家編<Part1>」、続きを読む、からどうぞ。
* * *
■バスチャン・ヴィヴェス(Bastien Vivès)
今年、『Polina(ポリーナ)』の最優秀作品ノミネートで注目を浴びた 27歳の新鋭バスチャン・ヴィヴェス。 |
『Polina』はバレリーナをヒロインにした、非常に繊細で抒情的な作品なのですが、
実際にご本人に会ってみると、フィギュアの熱烈なコレクターで、挌闘ゲームの大ファンという、
かなりのオタ......イマドキの若者でした。いやー意外。
日本の『バクマン。』などのマンガも読んでいるそうで、
『少年ジャンプ』に代表されるような、日本のマンガ連載システムに興味津々なんだそうです。
実際に、BDで日本のマンガの週刊連載のようなかたちが可能かどうか、
実験的に試してみたりもしているとか。いろんな意味でBD界のニューウェーブといった印象でした。
■フィリップ・カルドナ&フロランス・トルタ(Philippe Cardona & Florence Torta)
フィリップ・カルドナさん(左)が作画、フロランス・トルタさん(右)が カラーリングを担当しています。 |
ちょっと日本のマンガ風の、親しみやすいかんじの絵柄が特徴。
彼らが手に持っている『NOOB』という本はフランスで大人気のシリーズで、
サイン会には黒山の人だかりができていました。
会場には、『NOOB』のコスプレをしたファンの方も。 |
カルドナさんは日本マンガの大ファンでもあり、たびたび来日もしていらっしゃいます。
フロランス・トルタさんとは、大学時代に造形美術と日本語の授業で出会って以来、
ずっと一緒に創作活動をしている唯一無二のパートナーです。
カルドナさんは、NHKの『テレビでフランス語』のテキストで作品が連載されていたので、
もしかしたら、ご存知の方もいるかもしれません。
■アレッサンドロ・バルブッチ(Alessandro Barbucci)
飛鳥新社刊行の雑誌「ユーロマンガ」の連載でおなじみ (もう一人はバルバラ・カネパさん) |
とても陽気な方で、写真撮らせてください!とお願いしたところ、この決めポーズ。
残念ながらちょっとブレてますが、こんなノリノリのポーズもしてくださいました。
イケメン! |
『スカイドール』は、本国でも「ユーロマンガ」で連載された3巻までが刊行済みで、
現在4巻目を制作中とのこと。
新刊の発売が待ち遠しいですね~。
■アルチュール・ド・パンス(Arthur de Pins)
「ユーロマンガ」第4号に掲載された『かわいい罪』の 著者アルチュール・ド・パンスさん。 |
今年のアングレームでは、『Zombillénium(ゾンビレニウム)』という作品で、
子ども向け作品賞(Prix Jeunesse)を受賞しました。
上の写真で、地面にうっすら残っているカニの絵。
石畳やマンホールの蓋など、アングレームのいろんな場所で見かけたのですが、
実はこれ、昨年のアングレームの時に、アルチュール・ド・パンスさんの
『La Revolution des crabes(カニの革命)』という作品のプロモーションのためにペイントしたものらしいです。
このカニの絵に限らず、道路へのペイントはいたるところで見かけたのですが、
たいてい無許可でこっそりやっているそう。(そしてゆるーく黙認されています)
今回のアングレームでは、この星型のペイントをたくさん見かけました。 (カネコアツシさんの『SOIL』のプロモーション?) |
というわけで、カニのペイントについても、もちろん無許可なので、
アルチュール・ド・パンスさんご本人は「誰の仕業かわからないな。魔法使いじゃない?(笑)」とのこと。
※ちなみに『La Revolution des crabes』は、横歩きしかできなかったカニが、不断の努力の結果、
前進することを覚え、ついにカニ界に革命を起こす......という、かなり衝撃的な作品です(笑)。
■トニー・サンドバル(Tony Sandoval)
今年、最優秀作品賞にノミネートされ『Doomboy(ドゥームボーイ)』の 著者トニー・サンドバルさん。 |
『Doomboy』は恋人を亡くしたギタリストの少年を主人公にした物語。
とても可愛らしい絵柄なのに、ちょっと毒のある描写が印象的な作風です。
例えばティム・バートン監督の映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のような、
シニカルなファンタジーが好きな方に、けっこう響くんじゃないかな~と思います。
『Les bétises de Xinophixérox』という作品も、こんなにかわいいイラストなのに、内容はかなりダーク。
■エマニュエル・ルパージュ(Emanuel Lepage)
『ムチャチョ』の著者エマニュエル・ルパージュさん。 ご覧の通り、赤いストールが素敵な、とてもダンディな方です。 |
『ムチャチョ』は、今年、飛鳥新社のEUROMANGA COLLECTIONから邦訳版が出版予定なので、
エマニュエル・ルパージュの名前は、今後要チェックです。
かなり読み応えのある内容らしいので、発売を期待して待ちましょう!
■レジス・ロワゼル(Regis Loisel)
「作家編<Part1>」のラストを飾るのは レジス・ロワゼルさんです。 |
「タバコ吸いに行くついでならいいよ」と応じてくださり、
サイン会の休憩中にお話を伺うことができました。
代表作の一つ『Peter Pan(ピーターパン)』は、ディズニー映画で有名なピーターパンのストーリーを下敷きに、
孤児の少年ピーターがいかにしてピーターパンになったのかを解き明かす物語。
ロンドンの貧民窟を舞台に、ピーターと彼を取り巻く人々の過酷な現実を描いた傑作です。
ディズニーのアニメと比べると、かなりリアルな絵、リアルなストーリーですね。
キュートでちょっと色っぽいティンカーベルも登場。 |
BD作家さんは、サイン会やメディアの取材などで、フェスティバルの開催中は本当に多忙なのですが、
みなさん、とても気さくに取材や撮影に応じてくださいました。
短いインタビュー動画も撮影しているのですが、編集や翻訳にまだもうちょっと時間がかかりそうなので、
そちらは少しずつご紹介していきます。
それでは、次の「BD作家編<part2>」をお楽しみに!