前回に引き続き、アングレーム国際漫画祭特集!
第2弾となる今回は、実際に現地に行ってきたBDfile編集部員による現地レポートです。
前編は、「会場案内編」ということで、たくさんの写真とともに、
リアルなフェスティバルの熱気をお伝えしたいと思います!
(※写真は、クリックで拡大します)
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■漫画の街アングレームへ!
アングレームは、パリのモンパルナス駅を出発して、TGVで約2時間半ほど行ったところにあります。
TGVはフランスの新幹線です。ちなみに 発音はフランス流に「テージェーヴェー」。 |
アングレーム駅。 まだ開場前(AM 8:30)なので人もまばらです。 |
駅からフェスティバルの会場となっている街の中心部までは、徒歩か、
あるいは駅から出ている無料の巡回バスで向かいますが、
この時、無料バスを利用するには、あらかじめ入場パスポートをゲットしておく必要があります。
入場料は1日券が14ユーロ、4日間の通し券が30ユーロ。
現地でも買えるようですが(※←すみません、未確認です)、
事前にインターネットで予約しておいたほうが安心です。
到着した時点では、まだ巡回バスが走っていなかったので、徒歩で会場へと向かいました。
徒歩15~20分くらいですが、街の中心部はかなり高台にあり、
荷物があると坂道がけっこうキツイのでご注意......。
さて、街を歩いていくと、さすが漫画の街だけあって、いたるところに漫画モチーフが溢れています。
通りの標識がふきだしのかたちになってる! |
街中のあらゆる場所に漫画の壁画が。 「こんなところにも!」というくらい、意外な場所で発見できるので、滞在中にお目当ての作家さんの壁画を探すのも楽しいかも。 ちなみにこちらは『Dans les villages』というシリーズで知られるマックス・カバンヌの壁画です。 その他の壁画については、こちらのサイトで確認できます。スクイテンやニコラ・ド・クレシー、マルク=アントワーヌ・マチューの壁画なんかもあります。発見できなかったメビウスの壁画はメインストリートのエルジェ通りにありました。こんなところにあったとは......。 |
デパートのショーウィンドーでも、 マネキンが漫画を手にポーズ。 |
『タンタン』の作者エルジェの名前を冠したメインストリート「エルジェ通り」には、エルジェの銅像が!(ちなみにこのメガネのレンズの色はなぜか2日目には白、3日目には赤に変わってました) |
街を歩くだけでもわくわくしてきます。次はいよいよ会場を見ていきます!
■アングレーム見どころ
街の中心部に着くと、まるで「城」のような豪華な建物がどーんとそびえています。
どーん! |
実は、これがアングレームの市庁舎(Hôtel de Ville)。
実際、塔の部分は中世時代に建てられた城の一部を移築したものなんだとか。
ちなみに市庁舎の中はプレス用の待合室になってました。なんともゴージャスなシャンデリアの下で待機するメディア関係者のみなさま......。 |
この市庁舎を中心に、周囲に点在するあちこちの建物でイベントが行われます。
まさに街全体が会場といった様子。 各会場へは歩いても移動できる距離ですが、坂道も多いので、無料の巡回バスなどを賢く利用すると効率的です。 |
こちらがフェスティバルのプログラム。今年は実行委員長を務める『マウス』のアート・スピーゲルマンがイラストを描いています。(右上のあやしいキャラには敢えて触れません) |
4日間の開催中、とにかくいたるところでイベントが行われるので、確実に見たいものは事前にこのプログラムで入念にチェックしておいたほうがよさそうです。
あまりの会場の広さに、すべては回りきれなかったのですが、主要な場所だけ紹介していきます。
●ル・モンド・デ・ビュル(Le Monde des Bulles)
大手出版社の出展ブースが並ぶメイン会場「ル・モンド・デ・ビュル」。
「bulles」は漫画のふきだしのことです。日本語にすると「ふきだしの世界」といったところでしょうか。
本の販売の他、各ブースでは有名作家のサイン会が常時行われているため、ひっきりなしにファンが詰め掛けます。
人気の作家のサインには、毎朝、整理券を求める長蛇の列ができていました。抽選の場合もあるそうです。
会場の一画には、エスパス・マンガジー(Espace MangAgie)というアジア地域の漫画に特化したコーナーも。
●エスパス・フランカン(Espace Franquin)
『ガストン・ラガフ』などの作品で知られるベルギーの漫画家アンドレ・フランカンの名を冠した「エスパス・フランカン」では、今年の目玉の一つでもあるスペインコミックの企画展(Expo La BD espagnole)が行われていました。パコ・ロカの『皺』をはじめ、貴重な原画がたくさん展示されていて、改めてスペインコミックの幅広さを実感する展覧会でした。
同じ建物内では、ラジオの公開収録が行われており、この放送は会期中ずっとアングレームの会場で流されています。
一方、建物の片隅では、課外授業にやってきた小学生が、漫画の授業の真っ最中。
●台湾コミック展(Expo Taïwan)
市庁舎の中庭の特設会場で行われた台湾コミックの企画展。
アーティスティックなものから、日本の雑誌に載っていてもまったく違和感なさそうな少女漫画まで様々なジャンルの作品を展示。台湾コミックの歴史もわかりやすく紹介されてました。
●魔術師、フレッド展(Expo Fred, l'enchanteur)
『Philémon』シリーズで知られる大御所BD作家フレッドの原画展。
ずいぶん昔の作品なのに、古さをまったく感じさせない斬新さ!
これは今の漫画ファンが見ても刺激的なんじゃないかと思います。
●アート・スピーゲルマン展(Expo Spiegelman)
この前衛的な建物は、今回のメインイベントの一つであるアート・スピーゲルマンの展覧会が行われていた会場。 が、こちらは時間の都合で中を見ることはできず......無念。 |
●漫画ミュージアム(Musée de la BD)
ここは2009年に新しく建て直された漫画ミュージアム。
フランスで出版されたあらゆる漫画、雑誌、原画を保管しており、その一部が常設展にて一般公開されているそうです。
今回の展示では、実行委員長であるアート・スピーゲルマンが国内外から作品をセレクト。
『リトル・ニモ』の原画やスーパーマンが初めて登場した『アクション・コミックス』第1号など、感涙ものの貴重なコレクションが並んでいました。これが...これが1億以上の値がついたというあの......!
さて、駆け足で紹介しましたが、フェスティバルの熱気が少しでも伝わったでしょうか?
実際に現地に行ってみて、アングレームはちょっと他では類を見ないような、まさに「国際的な」漫画イベントだということを実感しました。
BDだけではなく、アメコミや日本の漫画、アジア地域やその他のヨーロッパ諸国まで、あらゆる漫画を扱っており、ここに来れば、世界中の漫画の歴史と「いま」を知ることができます。
なによりも、作家や出版社と、ファンとの距離がとても近く、同じ漫画を愛するものとして、一緒になってこのイベントを盛り上げ、楽しんでいるのが印象的でした。
時間の都合で、今回は取材できませんでしたが、
この他にも、若手BD作家の作品を展示した展覧会(Le Pavillon Jeunes Talents)やコンサートとライブ・ペインティングを組み合わせたデッサンのコンサート(Concert de dessins)、オルタナティブ系出版社のブース(Le Nouveau Monde)など、時間があったら是非とも見たかったイベント、会場がまだまだたくさんあります
もし、アングレームに行くチャンスがあったら、ぜひ見てきてください!
というわけで会場案内編は以上です。
次回の現地レポート後編では、アングレームで出会ったBD作家さんを紹介したいと思います!