COLUMN

6月新刊『メタ・バロンの一族』(上)/歴代メタ・バロン一挙紹介!


ホドロフスキー×ヒメネスのSFコミック『メタ・バロンの一族』上巻が
現在、好評発売中です。


metabarons_cvr.jpg   メタ・バロンの一族 上

  アレハンドロ・ホドロフスキー[作]
  フアン・ヒメネス[画]
  原正人[訳]

  B5変型、304ページ、並製、オールカラー
  定価:3,150円(税込)
  ISBN 978-4-7968-7119-8

  ※下巻は2012年9月下旬発売予定!

  Gimenez & Jodorowsky, La Caste des Métabarons,
  © Les Humanoïdes Associés, SAS - Paris, 2012


今回は、
メビウス×ホドロフスキーの『アンカル』のスピンオフシリーズと言うけれど、どんな話なの?
『アンカル』を読んでいないのだけど、メタ・バロンって何?

という読者の方々のために、

メタ・バロンとはそもそもどういうキャラクターなのか?というところから、
一族に伝わるイニシエーション(通過儀礼)、歴代メタ・バロンをご紹介していきたいと思います。




■メタ・バロンとは何か?



そもそもメタ・バロンとはどういう人物なのでしょうか?

メタ・バロンが最初に登場したのは、『アンカル』第1章での下記のシーンです。


0711_01.jpgのサムネール画像   『アンカル』
  第1章「闇のアンカル」より


メタ・バロンは宇宙一の賞金稼ぎで、最強の殺し屋
金さえ積めば、確実に仕事をこなしてくれる無敵の傭兵として人々から恐れられ、
各地で殺戮劇を繰り広げては、宇宙にその名を轟かせていましたが、
ある時から、難攻不落の秘密基地「メタ要塞(バンカー)」に閉じこもり、伝説的な存在となっていました。

やがて彼はさえない私立探偵のジョン・ディフールと出会い、
謎の生命体アンカルを巡る宇宙抗争に巻き込まれていくのですが、
この『アンカル』で、メタ・バロンは主人公以上の活躍を見せて人気を博し、
本編では語られなかった彼の過去が、
アンカルの秘密(Les Mystères de L'Incal)という『アンカル』の解説本に
スピンオフ短編として収録されることになります。


0711_02.jpg
▲短編『ソリューンの誕生』より(『アンカル』収録)




この短編で初めて、「メタ・バロン」というのが一族に代々受け継がれる称号であり、
彼らの一族に伝わる過酷なイニシエーション(通過儀礼)の存在が明らかになります。

そのイニシエーションとは、以下の2つ。


一、メタ・バロンの一族は、一族の証として、身体の一部を破壊しなければならない。

一、メタ・バロンの名を受け継ぐにあたって、
自らの手で父親を殺さなければならない。



なぜこのようなイニシエーションが行われることになったのか?
なぜメタ・バロンは代々殺し屋の一族として生きていくことになったのか?



短編の発表により、メタ・バロンをめぐる謎はますます深まることになりました。
その全貌を解き明かすために作られたのが、
本作『メタ・バロンの一族』シリーズです。




■初代からメタ・バロンから最後のメタ・バロンへ



『アンカル』に登場するメタ・バロンは実は5代目のメタ・バロン。
つまり時系列的には、『メタ・バロンの一族』は『アンカル』よりも過去の物語で、
作品自体も、まったく独立したストーリーになっています。

『メタ・バロンの一族』では、初代メタ・バロンから最後のメタ・バロンまで
5代にわたって脈々と連なる一族の歴史が語られています。



まず最初に登場するのが
初代メタ・バロン
オトン

0711_03.jpg

オトンはもともとは宇宙を股にかけて活躍していた海賊
辺境の惑星マルモラを支配するカスタカ一族に婿入りし、一男を儲けますが、
やがて一族が守ってきた秘密をめぐって戦争が勃発します。
その結果、一族を皆殺しにされ、息子とただ二人、生き残りますが、
その息子バリを不慮の事故で失ってから、彼の運命は狂いはじめることに......。



そして、紆余曲折を経て誕生した
2代目メタ・バロン
アグナル

0711_04.jpg

彼はなんと、生まれながらにして「重さがない」メタ・バロンです。
父母を失ってから、復讐を心に誓い孤独な日々を送りますが、
銀河一の美女オダとの出会いをきっかけに、
本人の預かり知らぬところで、ある罪を犯すことになります。
このアグナルが犯した罪をめぐる驚愕のエピソードは、
メタ・バロン一族が「呪われた一族」と称されるゆえんでもあり、上巻の見どころの一つです。



次に登場するのが、一族の歴史上最も卑劣な男とされる
3代目メタ・バロン
テット・ダシエ(鋼の頭)

0711_05.jpg

左側の、鋼鉄の仮面をかぶったような人物がテット・ダシエです。
奇妙な名前は、彼の誕生時のエピソードに由来しています。
上巻では、このテット・ダシエの衝撃の誕生秘話から
イニシエーションである父親との対決に臨むまでが描かれます。



このテット・ダシエの生涯については下巻で詳しく語られることになりますが、
彼は、一族の中でも最も奇想天外な人生を送る男で、
作者のヒメネスとホドロフスキーも一番愛着を持っているキャラクターだと述べています。


続いて、下巻で登場するのが4代目、そして最後のメタ・バロン。



4代目メタ・バロン
アゴラ


0711_06.jpg

彼は、特殊なキャラクター揃いの一族の歴史の中でも
特に特殊な事情を抱えた、前代未聞の存在と言えます。
スピンオフ短編『ソリューンの誕生』で、
現在のメタ・バロンにイニシエーションを行っていた父が、何を隠そうこのアゴラなのですが、
まさかそんな秘密があったとは......と驚愕すること必至です。



5代目メタ・バロン
サン・ノン(名無し)


0711_07.jpg

このサン・ノンこそが、『アンカル』にも登場した現在のメタ・バロン
実はこの『メタ・バロンの一族』は、
メタ・バロンの忠実な召使いロボット、トントが同じくロボットであるロタールに話して聞かせている
「昔話」という体裁をとっているのですが、
ここで舞台がようやく現在にリンクすることになります。




ネタバレになるので、
ここでは極力、核心部分には触れないようにして各キャラクターをご紹介しましたが、
各メタ・バロンごとに、予想もつかないような驚愕の展開が待っています。



はたして、メタ・バロンの一族の呪われた物語は
どのような結末を迎えるのか?


神話や系譜学を取り入れた、まさにホドロフスキーの本領発揮ともいえる世界観と、
まるで映画を見ているような緻密で美しいヒメネスのアートワークで綴る、
壮大なスペース・サーガ、ぜひ本編で体験してください!




アンカル表紙画像.jpg   未読でも充分楽しめますが、
  こちらも名作なので、あわせてぜひ ↓



  アンカル

  アレハンドロ・ホドロフスキー[作]
  メビウス[画]
  原正人[訳]

  B5変型、336ページ、上製、オールカラー
  定価:3,990円(税込)
  ISBN 978-4-7968-7083-2

  Mœbius & Jodorowsky, l'Incal, version classique
  © Les Humanoïdes Associés, SAS - Paris, 2010




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