COLUMN

【在仏特派員企画】「Tokyo Crazy Kawaii Paris」現地レポート クールジャパンの実態は?


去る9月20日~22日にフランス・パリで
日本の "カワイイ"文化を発信するイベント
Tokyo Crazy Kawaii Paris」が初開催されました。

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http://www.crazykawaii.com/


このイベントの特色は、ジャパン エキスポ〔※1〕エピタニメ(Épitanime)〔※2〕など
フランス現地のファンから立ち上がったイベントではなく、
日本人主催によるイベントであるということです。
この手のイベントが、日本人の主催によってここまでの規模で行われるのは、
おそらくフランスでは初めての試み。
経済産業省の助成を受けていて、いわゆる「Cool Japan」政策の一環となる
イベントのひとつと言っていいかもしれません。

BDと直接の関係はないかもしれませんが、
ジャパニーズ・カルチャー好きのリアルな声が聞けるこの貴重な機会に、
トゥールーズ在住の翻訳者でライターの鈴木賢三さんが、現地レポートに行ってきてくれました。

日本発のKawaiiを発信するという「Tokyo Crazy Kawaii Paris」から、
どんな日仏交流の未来が見えるでしょうか?



* * *


みなさん、はじめまして。
BDfileでの初めての記事がBDではなく謎のイベントについてになってしまい、
ちょっと落ち込んでいるライターの鈴木賢三です。
ともかくも「Tokyo Crazy Kawaii Paris」に行ってきました。

ゲストは土屋アンナ、少年ナイフ、SPYAIR、木村祐二、美女♂menZ(桜塚やっくん)。
アートディレクションとキャラクターデザインは、海外と新宿ゴールデン街で活躍しているshojonotomoさん。
出展ブースは渋谷109や原宿のブランドショップなどアパレル系、セガ、Good Smile Companyなどアキバ系。
「TSUKIJI」と名付けられたブース・エリアでは、日本直送の寿司やラーメン、讃岐うどんなどが販売されました。この他に、フランスの同人サークル、パリジュンク堂、ブースは無人とのことでしたがGAINAXとBS-TBSなどが出展しています。
入場券は1日18ユーロ(約2430円)。これは、ジャパンエキスポを意識しての値付けと思われます。


■会場へ!


イベント会場のあるパーク・フローラル(Parc Floral)という公園はパリの東、ヴァンセンヌにあります。

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なかなか広い公園で、「Crazy Kawaii」の会場にたどり着くには、迷うとかなり歩くことになります。
公園には案内もあるのですが、中には「Crazy Kawaii」に向かう人だけでなく、パーク・フローラル自体を訪れている人々も多いので、うっかりするとクジャクが横切るなんて景色にも遭遇しちゃいます(迷ってるじゃん!)。

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気持ち良さげなカフェがあったので一休みしようかと思っているところで、やっと入り口を発見。

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■アパレル・ブース

入ると、すぐにあるのが、渋谷109などのあるアパレル・ブース。

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131002_09.jpg なにやら懐かしい感じのコギャルさんのイベントもありました。
フレンチ・コギャル(!)とのコラボのシーンもあったのですが、人混みのせいで、いい写真が撮れませんでした。ごめんなさい。

このアパレルコーナーは、今回の「Crazy Kawaii」の目玉で、フランスでは入手が困難なブランドがやってきています。
ボクが来訪者から直接聞いた感じでは、これを目的に訪れた人も多そうでした。
もちろん和物グッズ系のブースも盛況でしたよ。
関係者の話では、物販、特にアパレルの売り上げが予想より好調だったようだとのこと。

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■フード・ブース

アパレルと並んで評判がよかったようなのが、フード関係です。
一見、田舎のショッピングモールのフードコートみたい(笑)ですが、パリではなかなか味わえない本物の日本の味です。

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確かに近年のブームもあって日本食はフランスにも様々あるのですが、ものによっては、日本と同じという訳には行かず、ちょっとアレな感じで、お値段もアレな感じです(泣)。
ただ、値段はさておき、お味は日本に近いものでした。

131002_16.jpg 面倒なのは支払方法で、税務上の理由か現金ではできず、5ユーロ単位の食券を買わないといけません。食券売り買い求めようとできた行列がすごい人数です。

マグロの解体ショーもすごい人気でした。「Pardon!」連呼で人混みをかき分け、苦労して撮った写真をご覧あれ!

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■shojonotomoブース

続いて「CrazyKawaii」のロゴとキャラクターのデザインを担当したshojonotomoさんのブースに行きました。

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ブースの一つはグッズ売り場で、もう一つは「Child Play 753」と銘打ったアート展示スペース。さらには、ファッション・ショーに作品を出展されたり、ライブ・ペインティングをしたりと日本コンテンポラリー・アートを代表して「CrazyKawaii」に花を添えていました。

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■来場者はどんな人?

来場者はどんな人たちなんでしょう? 会場にいるフランス人に話しかけてみました。

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最初は初音ミクのプチコスプレをした姉妹。
お姉さんは中学生、妹さんは小学校5年生です。お母さんと一緒に来ていました。
初音ミクはYouTubeで知ってファンになったそうです。初音ミクは彼女たちにとって、ボカロというよりは歌手とアニメキャラの中間といった認識のよう。どちらかと言えばファッション関係が目当てというより、漠然と初音ミクやアニメのキャラクターを通じた日本のKawaiiに憧れての来場といった感じです。このような年齢の女の子の親子連れは意外に多く目につきました。

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次の女の子も同じタイプです。年齢は15歳。
やはりお母さん、お姉さんと一緒に来ていました。

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三番目はカップルです。リア充です。
男の子が17歳、女の子が14歳です。男の子が守るように一人で話したので、女の子がどういう動機で来場したのかはよくわかりませんでしたが、どちらかというとボカロ・ファンの男の子に誘われてという感じでした。ただ女の子の方もアニメやマンガに興味があると言っていましたので、先々は立派なオタカップルに成長してくれるでしょう。

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次は、スイスからはるばる来た20歳の青年です。
今回コスプレ初挑戦とのことです。彼ほどのツワモノになるとアニメ・マンガの日本系イベントは行きつくした感があり、今回のイベントの趣旨をしっかり理解したうえで、新鮮味を求めて日本食とボカロ・イベントを目当てにやってきたとのことです。

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5番目はボクの友人(右端)とその仲間たちです。
はるばるトゥールーズやニームから来ました。ロリータ・コンクールに出場するためです。ボクの友人が20代半ばですのでみんな同じくらいの年だと思います。交通費や宿泊費がかかるので買い物はできないと言っていましたが、お金があればもちろん買いたいとも言っていました。ただ、彼女たちクラスになると、ネットで何でも買っていますので(海外発送がない場合は知り合いを頼って)それほど触手は動かなかった模様。プリクラを一生懸命やっていました。

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最後はコスプレコンクールにも出場していたセミプロチックなコスプレイヤーの子です。
着ている衣装も初音ミクのある特定のキャラです。初音ミクがコスプレしているのをさらにコスプレしている感じです。半分お仕事で仲間と来ている様子でした。日本と同じように、そういう人たちがすでにフランスにもいるということは指摘しておくべきでしょう。コスプレばかりを狙ったカメラマン風のブログもフランスにはありますから当然と言えば当然ですが。

こうして話を聞いてみると「日本とあまり変わらないのかぁ」という印象。フランスのオタク系市場の成熟度を感じさせます。
あわせて他のコスプレの方々の写真もご覧あれ。

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■モエカワ・カフェ

今回の「CrazyKawaii」は女の子向けのファッションやアイテムが特に来場者に注目されていたことは先に述べました。
また、ローティーンの女の子が母親に連れられている姿が目立っていたことも述べました。
イベント名が「CrazyKawaii」ですから、これは運営側の狙いとして大成功だと思います。
そう思っていると、秋葉原と原宿ゾーンの間に、この読みを一蹴する空間がありました。

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moekawa café(モエカワ・カフェ)」です。
カワイイ衣装を身にまとった店員「モエカワ ガールズ」たちが、時たまブース内ステージで、楽曲やダンスを披露。ステージ前はオタ芸の嵐
こ、これは......これもKawaiiなのか......。
ボクが話したローティーンのフランスの女の子たちと無縁の世界。
オタ芸の盛り上がりは周囲の雰囲気を圧倒していました。
でも、ローティーンの女の子はドン引きじゃないかなぁ(汗)。


■おまけ

最終日の夕方、クールジャパン担当であらせられる稲田朋美内閣府特命担当大臣が、いらっしゃられました。
大名行列の中、ラーメンを召し上がり、いくつかブースをご訪問なされて、最後は得意のゴスロリ風のお召し物にお色直しをなされての記者会見。
マンガやアニメばかりが取り上げられるクールジャパンですが、これに日本食やファッションなどを合わせて、日本のライフスタイル全般をクールジャパンとして広めていきたい、とのこと。
会場には農水省などの名が付された「日本食の安全性」というブースも出展されていました。

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いかがでしたでしょうか。
ボク個人は、こういうKawaiiの影響を受けて育った世代の感性で書かれたBDを読んでみたい気がします。
いや、そもそもKawaiiという感性を持った女の子向けのBDというものは可能なのでしょうか?
ともかく、日本とフランスがお互い刺激し合って、おもしろいBDとマンガが描かれるのが一番ですよね。


※1―http://nihongo.japan-expo.com
※2―エンジニア専門学校Epitechの生徒が主催するフランスで最も古い日本マンガイベント。今やヨーロッパ最大規模にまで成長したジャパンエキスポも、元をたどるとこのエピタニメの分家とか。

(Text by 鈴木賢三)

* * *


鈴木賢三さんによる「Tokyo Crazy Kawaii Paris」現地レポートをお送りしました!
フランス滞在中の鈴木さんには、これからも定期的にフランスから現地の生の声をレポートしていただく予定です。どうぞお楽しみに!




■追記(10月6日)

すでに報道されています通り、記事中にお名前が登場した
美女♂menZのメンバー「桜塚やっくん」さんが、5日、事故でお亡くなりになりました。
訃報に際し、執筆者の鈴木さんからのコメントを掲載させていただきます。



Tokyo Crazy Kawaii Parisでの取材中、出演者の美女♂menZさんに、お会いしました。
ライヴ・パフォーマンスがパリの観客に大ウケで、気になったボクは、
すぐにトゥールーズのイベントへの出演可能性を聞きに彼らのブースにお邪魔したのです。
その際、プロデューサーの砂守孝多郎さんと桜塚やっくんさんは親切に迎えて下さり、
トゥールーズでのイベントへの参加も快諾してくれました。来年4月の予定でした。
つい一昨日も砂守さんから、以下の動画をトゥールーズでのプレゼン・プロモ用に
使って欲しいというメールをいただいたばかりでした。
http://www.youtube.com/watch?v=OoS64m_UylI

皆様、ご存知とは思いますが、お二人が亡くなられました。
ちょっと信じられないですし、言葉もありません。
トゥールーズのイベントに参加いただいて、
こちらでも盛り上がって欲しかったのですが、
残念で仕方ありません。
心から、ご冥福をお祈りします。

鈴木 賢三


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