COLUMN

【BD最新事情】クリスティーズが初めてBDオークションを開催! 盛況のうち終わる


翻訳家、日仏コーディネーターとして活躍されている
鵜野孝紀さんが不定期でお届けする現地のBD最新事情!

今回は、老舗オークション会社のクリスティーズが
初めてBDの原画のオークションを開催したニュースについてです。

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Photo : D. Pasamonik (ActuaBD)

今年の4月、老舗競売会社クリスティーズ(Christie's)初めてBDの生原稿を対象とするオークションをパリで開催して話題となった。

364点のモノクロ原稿・イラストが出品され、落札総額は400万ユーロ近く(約5億5,000万円)に達した。

高値をつけた出品物をいくつかあげてみよう。

※下線クリックで、該当出品物の画像にとびます。
※( )内の日本語タイトルはすべて仮題です。



『タンタン チベットをゆく』の下書き原稿1枚:289,500ユーロ(約4,000万円)

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タンタン チベットをゆく



『アステリックス』第19巻 「Le devin(占い師がやってきた)」 表紙用モノクロ原稿
193,500ユーロ(約2,600万円)

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『アステリックス』第19巻 「Le devin(占い師がやってきた)」



『スピルーとファンタジオ』表紙用モノクロ原稿:157,000ユーロ(約2,100万円)

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『スピルーとファンタジオ』



『アステリックス』第20巻 「Astérix en Corse(アステリックス、コルシカ島へ)」
本文モノクロ原稿1枚:145,500ユーロ(約2,000万円)

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『アステリックス』第20巻 「Astérix en Corse(アステリックス、コルシカ島へ)」



メビウスの『アンカル』本文モノクロ原稿1枚:47,100ユーロ(約650万円)

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アンカル



ジブラ(Jean-Pierre Gibrat)の『Le Sursis(執行猶予)』と
『赤いベレー帽の女』のヒロインを同じ画面に構成したカラーイラスト
67,500ユーロ(約930万円)

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『Le Sursis(執行猶予)』 / 『赤いベレー帽の女



フランス・ベルギーでは元から作家が自らBD作品の原稿を販売することは広く行われており、主な収入源の一つともなっている。たいていは専門のギャラリーが展覧会を開いて販売するほか、BD古書店で常時扱っている場合も多い。

BDオークション自体はこれまでも様々な形で行われており、『タンタン』や『アステリックス』といった古典の生原稿は高値で取引されていたが、今回始めて世界的に有名なクリスティーズによる本格的なオークションが行われるに至った。BD専門ギャラリーの第一人者Daniel Maghenの協力を得て、現代作家も多くカバーする充実した出品目録とするのにおおよそ7年の準備期間が必要だったという。

昨秋、大手BD出版社グレナが、Galerie Glénatをオープンしたのが業界では大きなニュースとなったが、フランスではここ数年BD専門ギャラリーがその数を増やしつつある

印刷物や電子媒体の形で読み物としてのBDに加え、オリジナル原稿がアート作品として鑑賞され、その価値を認められることで、新しい市場を開拓しようとする動きである。

一部のBDマニアがコレクションするのどかな時代から、美術品としてより多くのコレクターを集め投機対象となる時代へのきっかけとなるだろうか。


●同オークションの出品目録は コチラ(ダウンロードして閲覧可能)
●全出品作品の競売結果はクリスティーズのサイトで閲覧可能。


Text by 鵜野孝紀
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