COLUMN

【来日イベント情報】今もっとも注目すべきBD作家ダヴィッド・プリュドムって誰だ!?


明日8日(木)、
アンスティチュ・フランセ東京(旧日仏学院東京)で
BD作家ダヴィッド・プリュドム氏の講演会が行われます。

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読書の秋2012
イラストの手品師 ダヴィッド・プリュドム
(司会:原正人)

●日時
2012年11月08日 (木)
19:00~21:00

●入場料
無料
※日仏同時通訳あり

●お問い合わせ
アンスティチュ・フランセ東京
03-5206-2500

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そこで、今もっとも注目すべきBD作家といっても過言ではない
このダヴィッド・プリュドムについて、
司会を担当される翻訳者の原正人さんにご紹介いただきました。

イベントに参加される方も、行こうかどうか迷っている方も、
ぜひ、事前にご一読ください!



* * *



 11月8日(木)にアンスティチュ・フランセ東京(旧日仏学院東京)でBD作家ダヴィッド・プリュドム(David Prudhomme)の講演会が行われる。

ダヴィッド・プリュドムと言えば、ブリュッチ(Blutch)などと同じように玄人受けする、BD好きにはよく知られた優れた作家なのだが、おそらく日本ではほとんど知られていないだろう。『イビクス』(古永真一訳、国書刊行会、2010年)の作者パスカル・ラバテが来日した際に、今後注目すべき作家を尋ねたところ、プリュドムの名がまっさきにあがったことを思い出す。せっかくなので、この機会に彼の仕事をご紹介しておきたい。

 ほとんど知られていないだろうと言ったが、実はダヴィッド・プリュドムは短編が一つ日本語に訳されている。『JAPON』(飛鳥新社、2006年)に収められた「おとぎの国」(関澄かおる、フレデリック・ボワレ訳)がそれである。

そもそも『JAPON』は、日仏総勢15名のマンガ家・BD作家がオリジナル短編を寄せた本で、BD作家たちは日本のさまざまな都市に実際に滞在し、その印象なり、そのとき思いついた物語なりを作品にしている。執筆陣に名を連ねるのはニコラ・ド・クレシーエマニュエル・ギベールジョアン・スファールなど錚々たる作家たちである。プリュドムは福岡に滞在し、その体験をもとにこの「おとぎの国」という短編を描いているのだが、これが、プリュドムが飲み屋でくつろいでいる間に彼の靴が福岡の町に逃げ出し、助けた亀に連れられて竜宮城を訪れたのか訪れなかったのか・・・・・・という、なんとも不思議な作品である。機会があればぜひお読みいただきたい。

 さて、そのプリュドムだが、ラバテの鑑識眼の確かさを証明するかのように、ここ数年、フランスでは目覚しい活躍が続いている

2006年と2007年にパスカル・ラバテ原作で『プラスチックのマリア様』を発表し、2008年にはこの作品の第2巻でアングレーム国際漫画祭の「優秀作品賞」を受賞している。


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  La Marie en plastique 全2巻

  [著者] Pascal Rabaté / David Prudhomme
  [出版社] Futuropolis
  2006 - 2007
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これは田舎のある家族の日常の一コマを描いたユーモラスな物語である。娘夫婦のもとに娘の父母が居候している。老母は敬虔なカトリックで、ルルドへの巡礼を終え、お土産にプラスチックのマリア像を買ってくる。夫は妻とは反対に熱烈な共産党員で、妻の信心深さを苦々しく思っている。娘は毎日繰り返される二人の喧嘩をうっとうしく思っているのだが、そんなある日、突然、プラスチックのマリア像が血の涙を流し始める。近所にまで噂が広がり、村は大騒ぎになり、しまいにはヴァチカンから使者がやってきて......。かっこよくも何ともない、というかむしろダサいフランスの田舎で巻き起こるドタバタ騒動が非常に楽しい作品である。


 この『プラスチックのマリア様』の次に発表されたのが、『レベティコ』である。


1107_04.jpg   Rébétiko (la mauvaise herbe)

  [著者] David Prudhomme
  [出版社] Futuropolis
  2009
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タイトルのレベティコとは20世紀前半のギリシャに生まれたポピュラー・ミュージックのことで、日本ではレベーティカ、またはレンベーティカと呼ばれることもあるようだ。レベティカ(あるいはレベーティカ、レンベーティカ)が単数形でその複数形がレベティコ(あるいはレベーティコ、レンベーティコ)ということになる。1920年代前半、オスマン・トルコの崩壊後、小アジアから大量のギリシャ人難民がギリシャ本国にやってくる。折しもギリシャではナショナリズムが高まりつつあり、国が近代化していく過程で、人口が膨れあがった都市にさまざまなひずみが生ずる。トルコの音楽的影響のもと、都市に住む下層階級の間で生まれたのが、このレベティコという音楽だ。ピーター・マニュエルが『非西欧世界のポピュラー音楽』(中村とうよう訳、ミュージックマガジン、1992年)という本の中で、当時、ギリシャの下層階級の間に蔓延した風俗を巧みに描いてくれているので、以下に引用しよう。


この風俗の担い手はレベテースやマンゲスと呼ばれる人たちだった。上流、中流階級の人々に蔑まれていたマンゲスは、バー、売春宿、大麻窟に集い、ハシシを吸い、密輸し、喧嘩し、盗品の売買をしていた。ハシシの吸引はレベテースの文化の中心であった。レベテースたちは酒を飲んで酔っぱらうよりは、ハシシ・ハイの内省的な至福感を好んだが、それは酒を出すカフェでよく起っていた暴力騒ぎのせいでもあったのだろう。それでも、レベテースの多くは彼らの自立性、時に卑俗な独特の隠語、一風変わった服装とともに、彼らの喧嘩の能力を誇りに思っていた。その彼らの服装だが、ふつうはぴったりとしたズボンをはいて中折れ帽(彼らの犠牲者への喪を示す黒いバンドが付いている)をかぶり、ナイフを振り回す相手に対してすぐ盾を作れるように左腕だけを袖に通してジャケットを羽織っていた。彼らの反社会的な行動、そして特にハシシ吸引に対する弾圧によって、レベテースの多くが牢獄で長い時間を過ごすこととなり、そこでいくつものレベーティカが生み出されたのだった。

ピーター・マニュエルが『非西欧世界のポピュラー音楽』(中村とうよう訳、ミュージックマガジン、1992年)P296


ダヴィッド・プリュドムの『レベティコ』で描かれるのがまさにこの世界である。主人公はギリシャのレベティコ奏者たち。1936年、ギリシャのファシズム化が進行しつつあるアテネで、彼らはハシシを吸い、音楽を演奏するという気ままな生活を送っている。退廃的な風俗に対する当局の目は日増しに厳しくなり、いつまでこんな生活を続けていけるのかまったくわからない。しかし、彼らは、彼らと彼らの愛する音楽を生んだその町に留まり、音楽を演奏し続ける。パランゴー&ルスタルの『バルネイとブルーノート』(Paringaux & Loustal, Barney et la note bleue)と双璧をなす激シブの音楽BDである。いつかこんな作品も訳される日が来るといいのだが......。

 そして、ダヴィッド・プリュドムの最新作が『ルーヴル横断』である。


1107_07.jpg   La Traversée du Louvre

  [著者] David Prudhomme
  [出版社] Futuropolis / Louvres Editions
  2012
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タイトルから想像された方もいるかもしれないが、これは小学館集英社プロダクションから刊行されているルーヴル美術館BDプロジェクトの最新刊でもある。ルーヴルのBDの面白みは、前の作家の作品を次の作家がどのように受けつつ、ルーヴルを題材に作品を描いていくかというところにもあるが、プリュドムのこの作品は既刊の作品とはかなり異なった仕上がりになっている。妻とルーヴル美術館を訪れたプリュドム本人と思しい主人公は、途中で妻とはぐれてしまい、彼女を探してルーヴル中を歩き回るが...という物語で、意外とすんなりと読めてしまうのだが、どこか変な読後感が残る作品でもある。一読したところではあまり腑に落ちないところもあり、ぜひ作者にいろいろと聞いてみたいところだ。


と、こう文章にしたところで、なかなかダヴィッド・プリュドムの作品の魅力は伝わらないかもしれない。冒頭に書いたように、ダヴィッド・プリュドムの講演会が11月8日(木)19時からアンスティチュフランセ東京で行われるので、ぜひ彼の絵を見て、その話を聞いていただきたい。

講演会と併せて原書を販売し、講演会後にはサイン会も行われるとのこと。BDの最前線で活躍するBD作家の講演会をお見逃しなく。


(Text by 原正人)


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今もっとも旬なBD作家の話が直に聞ける貴重なイベントです。
みなさまぜひぜひご参加ください!


COLUMN

『闇の国々Ⅱ』発売記念! 翻訳者・原正人氏による作品解説


昨日10月30日、前巻『闇の国々』の好評を受け、
ついにシリーズ全4巻での刊行が決まったシリーズ第2弾、
『闇の国々Ⅱ』が、めでたく発売を迎えました!

 
闇の国々Ⅱ.jpg   好評発売中!!


  闇の国々Ⅱ

  ブノワ・ペータース[作]/フランソワ・スクイテン[画]
  古永真一・原正人[訳]
  定価:3,990円(税込)
  ISBN 978-4-7968-7132-7

  © 2007, 2008, 2009 Casterman, Bruxelles All rights reserved.


そこで、今回は気になる『闇の国々Ⅱ』の見どころについて
翻訳者のお一人である原正人さんに解説していただきました!



* * *



昨年末に刊行された『闇の国々』に続いて、『闇の国々Ⅱ』が10月30日に発売された。

ファンの方々にはもう説明は不要かも知れないが、『闇の国々』はフランス人BD原作者ブノワ・ペータースが原作を、ベルギー人作画家フランソワ・スクイテンが作画を担当したBDのシリーズ作品である。1982年に『(A suivre)』誌で連載が始まってから現在に至るまで描き続けられ、累計で十数巻に及ぶ単行本が刊行されている。


日本では早くから大友克洋谷口ジローといったマンガ家が注目し、『error』誌(美術出版社)でシリーズの一作品『見えない国境』(関澄かおる訳)の冒頭部分が連載されるなど、一部では高く評価されていた作品だったのだが、全体像が紹介されることはなかった。その本格的な翻訳紹介が昨年小学館集英社プロダクションから出版された『闇の国々』である。収録作品は「狂騒のユルビカンド」、「」、「傾いた少女」の3作。どれもBD史に残る傑作と誉れ高い作品である。


yami_no_kuniguni.jpg   重版出来!

  『闇の国々』

  ブノワ・ペータース[作]
  フランソワ・スクイテン[画]
  定価:4,200円

  © 2008, 2009, 2010 Casterman, Bruxelles All rights reserved.


シリーズ作品と言ったが、日本の長編マンガのように既刊の十数巻が連続した一つの物語を形成しているわけではない。「闇の国々」という共通する世界観は存在するものの、それぞれの巻は異なる国の異なる物語を語っている。したがって、各作品は個別に読むことが可能である。邦訳1巻目に収められた各作品は、原著の刊行順でいくと、「狂騒のユルビカンド」が第2巻、「塔」が第3巻、「傾いた少女」が第6巻だが、読書を楽しむ上で何の支障もないはずだ。


とはいえ、このシリーズがどう始まったのか、またその後どう展開していったのか、気になるところではあるだろう。読者の声に応える形で小学館集英社プロダクションはシリーズを全4巻で刊行することを決定したが、今回出版された『闇の国々Ⅱ』には、『闇の国々』シリーズの起源である「サマリスの壁」、未完の断片をまとめた「パーリの秘密」、正編の第5巻に当たる「ブリュゼル」、そして番外編の「古文書官」の全4作品が収録されている。



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サマリスの壁」は1982年に『(A suivre)』誌で連載が開始され、1983年に単行本として刊行された作品である。長年の友人だったブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンが初めてプロとして一緒に仕事をした作品で、その後、長期にわたって描き続けられることになる『闇の国々』シリーズの記念すべき第1巻でもある。初期の作品ということもあり、少し生硬なところも感じられるかもしれないが、アール・ヌーヴォーに想を得た都市の光景は、今見ても非常に美しい。物語は幻影を生み出す都市に翻弄される主人公の悲劇を描いており、アルゼンチンの小説家アドルフォ・ビオイ=カサレスの『モレルの発明』の影響を強く感じさせる。


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パーリの秘密」はもともと長編として構想されながら、最終的には完成を見なかった作品の断片をまとめたものである。『闇の国々』シリーズの中には小部数で刊行されたり、付録のような形で発表される作品もあるが、ここにまとめられた断片がまさしくそのような作品だった。ついに完成には至らなかった作品の舞台裏が垣間見えるという意味でも貴重な作品だろう。タイトルは19世紀半ばに活躍したフランスの小説家ウジェーヌ・シューの『パリの秘密(Les Mystères de Paris)』を想起させる。タイトルどおり、「闇の国々」の近代都市パーリの華やかな生活の裏に隠れた秘密が語られる。


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次の「ブリュゼル」は1991年に『(A suivre)』誌で連載が開始され、1992年に単行本として刊行された。「パーリの秘密」では、現実の都市パリとよく似た都市が描かれ、実在の歴史的建築物と思しい建築物が多く登場している。そしてその中の一章「アブラハム博士の奇妙な症例」では、パーリとパリがどこかでつながっていることが暗示されている。一つのトポスを中心にあちらの世界とこちらの世界が表と裏のように、光と影のように存在している。この主題をおそらく初めて組織的に『闇の国々』シリーズの中で展開したのが、この「ブリュゼル」である。選ばれた都市は二人の作家にゆかりの深いブリュッセルである。ちなみにブリュッセルはBruxellesまたはBrusselと綴り、ブリュゼルはBrüselと綴る。ブリュッセルの近代化の歴史がブリュゼルのそれとどう重なりどう異なるのか、ペータースの序文と併せてお楽しみいただきたい。



ある場所が蝶番となり、私たちの世界と「闇の国々」をつないでいるというこの主題は、のちに「傾いた少女」で、それぞれの世界の相互交通という主題へと深められていく。だが、そのアイディアそのものは『闇の国々Ⅱ』の掉尾を飾る「古文書官」で既に示されていた。私たちの世界にある中央史料館の職員イジドール・ルイが、「闇の国々」をめぐる資料を集め、論文と手記を執筆するという体裁をなしたこの本は、1987年に刊行されている。この本の刊行時点で既に「サマリスの壁」と「狂騒のユルビカンド」、「塔」は完結していたが、それ以外にも既にさまざまなモチーフがあったはずで、それらをまとめ、いわば創作ノートを作品の形にしてしまおうというのがこの作品である。「闇の国々」の資料を集める任務を帯びたイジドール・ルイが、どのような運命を辿るのかについては実際に「古文書官」をお読みいただきたい。


昨年刊行された『闇の国々』に収録された作品は白黒で描かれたものが多かったが、作画のフランソワ・スクイテンは色づかいの巧みさにおいても巨匠と認められている作家である。幸い今回刊行された『闇の国々Ⅱ』にはカラー作品がふんだんに収められている。まずはその美しさをご堪能いただきたい。また、各作品は個別に読めると上で述べたが、何人かの登場人物は作品をまたいで登場している。彼らの活躍(あるいは凋落?)ぶりにもご注目いただきたい。『闇の国々』と併せて読むことで、彼らの世界の広がりを味わっていただければ何よりである。来春には『闇の国々Ⅲ』の刊行も予定されている。こちらも楽しみにしていただきたい。


(Text by 原正人)

COLUMN

イタリア漫画界の巨匠 セルジオ・トッピ氏追悼



去る8月21日、イタリア人漫画家のセルジオ・トッピ氏がミラノにて亡くなりました。79歳でした。

トッピ氏は、日本ではまだほとんど紹介されていないBD作家ですが、
その類まれなる画力によってイタリア、フランスで高く評価されており、
コミックの他、数多くの画集も出版されている、まさにイタリアを代表する偉大なアーティストのお一人です。

※アメリカでも一時期マーベル・コミックのカバーアートを手掛けたことなどで知られています。
 →その時のカバーアートはこちらから。


0905_01.jpg   代表作『シェヘラザード』


  SHARAZ-DE 〔全2巻〕

  [著] Sergio Toppi
  [出版社] Mosquito



そこで今回は、日本ではいまだ知られざるイタリア漫画界の巨匠
セルジオ・トッピ氏の業績について、翻訳者の古永真一さんに語っていただきました。





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イタリアを代表する漫画家セルジオ・トッピが2012年8月21日、79歳で亡くなった。
日本ではほとんど紹介されていないので、トッピと言われてもピンとこないかもしれない。

トッピは、1932年にイタリアのミラノで生まれた。

50年代は広告用の短編アニメーションの制作に携わり、イラストレーターとしても活動した。1960年からイタリアの有名な雑誌『コッリエーレ・デイ・ピッコリ』誌に最初のマンガ作品を発表する。その後も精力的かつ創造的な活動によってイタリア漫画界に新風を吹き込み、クレパックスブッゼッリバッタリアと並ぶイタリア・マンガの四天王の一人となった。

70年代末からフランスのBD市場でも活動するようになり、とりわけ90年代後半からフランスのモスキート社が紹介に熱心で、私も同社から出ている仏訳でトッピを知った。2007年にはパリの地下鉄ピラミッド駅でトッピの作品が紹介され、その模様はモスキート社がネット上で紹介している。


トッピの活動は多岐に及ぶ。モスキート社からはイラスト集も何冊か出ており、その一端を知ることができる。神話的な世界や19世紀のヨーロッパ、現代社会や近未来社会、古今東西の老若男女や動物......さまざまなイラストを描いていたことがわかる。



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〔黒澤明へのオマージュ 〕

 
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〔三島由紀夫の小説の挿絵 〕


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〔グルノーブルでのトッピの個展の宣伝用ポスター 〕



トッピの作品で特徴的なのは、なんといってもその魅力溢れる写実的な絵である。幻想的で耽美ではあるが抑制が効いている。線で細かく影をつける線影の手法や、彫刻刀で勢いよく彫ったような力強い描線は、風景描写にせよ、人物描写にせよ、読者を魅了してやまない。



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〔『千夜一夜物語』をモチーフにした『シェヘラザード 』〕



ざっくりとしていながらも繊細なトッピの描線は、代表作『シェヘラザード』でも遺憾なく発揮されている。執拗なまでに線を積み重ねることによってしか表すことのできない幻想的な世界が絢爛豪華に展開されている。

『シェヘラザード』の図版を見てわかるとおり、トッピの作品のコマ割りはひじょうに自由である。インパクトのある大ゴマを中心に据えて、その周囲に別のコマを配置しようとする。絵画性の強いBDではまま見られるページ構成だ。



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〔『シェヘラザード 』〕


上記の図版では、荒野に生きる鳥はコマの枠線を悠々と飛び越しているが、コマのシークエンスというマンガの時間表現をものともしないその姿勢は、トッピの自由な精神を象徴しているかのようだ。二コマにまたがった長方形の吹き出しの背後には、徐々に小さくなっていく方形のコマが鳥の飛翔する時間の経過を表し、下部の枠線のない大きな絵においては、奥行きのある風通しのいい眺めとともに、大自然の悠久の時間が威厳すら感じさせる趣で描かれている。



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〔『シェヘラザード 』〕


上記の図版では、太陽は円という象徴性に集約される形で素っ気ないほどシンプルに描かれているが、つり上げられた魚は圧倒的な線の質感によって浮き彫りにされる。魚よりも魚を描くために動員された線の蠢きを見せたいのではと勘ぐらせるほどのクローズアップである。



このような中心となる絵が飛び出してくるような自由な描き方は、日本人にとっては少女マンガなどで馴染み深いものだ。その対極として、ワッフルを作る型のように一定の大きさのコマで描き続けるBDもよくみられるが、トッピの場合は、読者の感覚に訴えるような前者の画面構成が顕著に見られる。



BDを扱った大学の授業で、トッピが比較的好評だったのは、彼のダイナミックでスタイリッシュな描き方にあったのかと思われる。一般的に少女マンガでは心理描写を極めるために引き延ばされる物語の時間は、トッピの作品にあっては、趣深い風景や人物の言動に潜むポエジーを描き出すために引き延ばされ、印象的に切り取られる。そのとき読者は、詩人の言葉が紡ぎ出すポエジーに驚くのと同様に、すべて線によって構築され喚起されるポエジーというものにあらためて驚き見とれるのだ。


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〔一風変わったウエスタン『コレクター 』〕


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〔『コレクター 』〕


こうしたトッピの絵からは、熱帯のジャングルであろうが、荒涼とした山岳地帯であろうが、執拗に線を描くことでイメージ通りの場面に肉薄しようとする鬼気迫る執念が感じられる。 


イラスト集に記されていたトッピの弁によれば、自分はさまざまなフィールドに関心があるが、なんといってもマンガが好きで、マンガによってコミュニケーションの扉が開かれたという趣旨の発言をしている 。たしかにイラストだけ描いていたのであれば、今このような追悼記事がBDの紹介サイトに載ることもなかったに違いない。



トッピはこの世を去った。いつか誰かが彼の作品を翻訳する機会に恵まれたとしても、その翻訳者は本人に質問することはできない。これは文化的受容の精度という点でも大きな損失である。しかし彼の作品は生き続けている。トッピとマンガによってコミュニケーションする可能性は依然として開かれているのだ。

トッピの冥福を祈るとともに、彼独特の強烈な線描の美学に裏打ちされた幻想的な作品が日本語で堪能できる日が来ることを望みたい。

                           
Text by 古永真一


* * *




下記のサイトでもセルジオ・トッピ氏の追悼記事を掲載していますので、
ぜひあわせてご覧ください。
1000planches/追悼 セルジオ・トッピ
※トッピ氏の著作一覧もまとめられています。


BDfileでの、初めてのトッピ氏の紹介が、追悼記事になってしまったのは本当に残念ですが、
これを機にぜひトッピ氏の素晴らしい作品を知っていただければ幸いです。

トッピ氏のご冥福を心よりお祈り致します。


COLUMN

【日仏討論会】フランス人にも聞いてみた!「BDってぶっちゃけどう思う?」


今回のBDfileではちょっと趣向を変えて、
ベデフィル、つまり無類のBD大好き!というマニアな層とはちょっと違う、
ごくごく一般的なマンガ好きの20代に、
実際のところBDってどう思いますか?」という超!ストレートな質問をぶつけてみました。

集まってもらったのは、日本とフランス、それぞれの20代を代表する4人。

一般的な20代の若者の目に、BDはどんなふうに映るのか?
率直な意見から意外な感想まで、ゆるーく語っていきます!



* * *



今回取材協力していただいたのは日仏の一般的な20代を代表する

Gwendoline Dugé(グェンドリーヌ・デュゲ)さん
Clotilde Moussier(クロティルド・ムーシエル)さん
中峯 加奈絵さん
岡 奈々子さん

の4名。

フランス人の二人はもちろんBDを読んでいますが、
日本のお二人は、普段大学でフランス語やフランス文化を学んでいるものの、
BDに接するのは初めてだそうです。



―みなさん、今日はお集まりいただき有難うございます。
 さっそくですが、みなさんはBDはお好きですか?


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▲グェンドリーヌさん(左)、クロティルドさん(右)


グェンドリーヌ(以下、グェン)&クロティルド(以下、クロ)
もちろん! 少しだけど読んだことはあるから」

加奈絵奈々子
「はい......多分(笑)」


―お二人はBDを見るのも初めてなんですもんね。
ではまず、BDを読んだことのある二人にお聞きますが、お気に入りのBDはありますか?



クロ 「わたしは『タンタン』とかクラシックなもの好き」

グェン 「私は『スカイドール』かな。あとはペネロペ・バジュー(Pénélope Bagieu)とか
     ローレル(Laurel / Laureline Michaut)とか」〔※1〕


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▲日本唯一のBD誌『ユーロマンガ』にも連載中の『スカイドール』。


―今グェンさんのあげたペネロペ・バジューはブログから人気の出た作家さんですよね。
ウェブの評価などを見てみると、"彼女はアマチュアでBD作家とは言えない"というような厳しい意見もありますが......。



グェン 「確かに彼女はプロではないというか、ブログの人気が出たから出版できた、
     というタイプではあると思う。でも絵柄もかわいいし、内容も面白いと思うわ」


―ちなみに今日は、彼女の最初のシリーズ『Ma vie est tout à fait fascinante』(直訳:ワタシの人生はホントに魅力的)をサンプルとして持ってきました。


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▲こちらが表紙。▲中身は一ページ一枚絵タイプ。 

         
奈々子 「かわいいですね。でもマンガという感じとはちょっと違うのかな」

加奈絵 「かわいい! BDってこんなタイプのものもあるんですね。
     なんていうか『江古田ちゃん』みたいな感じ(笑)」〔※2〕


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▲加奈絵さん(左)、奈々子さん(右)


グェン 「フランスでは、BDがそこまで好きでない人も、ブログ発信のBDはよく読んでるわ
     例えばマルゴー・モタン(Margaux Motin)とかパッコ(Pacco)、さっきのローレルとか。
     どれも20~30代の若い女性の私生活を描いたものだから、
     少し本来のBDのスタイルとは違うけどね」
          (※実際に人によってはBDと見なさず、"Liver Illustré"、つまりイラスト本とする方も
     いるそうです。BD好きの間でも大きく好みは分かれます)



―続いて日本ではなかなか馴染まれないBDに対して、日本のマンガをフランスが受け入れたのは、そして今でも人気なのはなぜでしょう?




グェン 「それまでフランスには、アニメのチャンネルがなかったり、
     BDにしても大手以外〔※3〕は基本的にマンガ雑誌というものがなかったからだと思う。
     だからその代わりとして安く買えるマンガを読むようになったかな。
     それに例えばだけどタンタンには話によって人種の問題に触れることがあるけど、
     日本のマンガは(デフォルメが強いから)、あまり人種を意識させないでしょ?
     移民の多いフランスでは人種の表現でトラブルになることも多いから、
     それがいい意味で曖昧な日本のマンガは受け入れられたんじゃないかしら」



―なるほど、確かに日本でマンガを読んでいて人種の問題を意識することはほとんどないですもんね。そういう意味では、「マンガはマンガ、BDはBD」とはっきり区別して捉えた方が、日本でも受け入れやすいのかもしれません。では、日本でBDが流行るとしたら、どのようなものがウケると思いますか?




クロ 「多分ね。エレガントでアートっぽいタイプのものが流行るんじゃないかな。
    メビウスとかこれ(『Les monstres de Mayuko』、『Le goût du chlore』)〔※4〕
    みたいなタイプ」


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▲メビウスのサンンプルとしてクロさんの取り上げた『アルザック(Arzak)』


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▲『Les monstres de Mayuko』


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▲『le goût du chlore』


クロ 「マンガはBDよりもっと"冒険"や"分かりやすい個性"、"スピードとテンポ"を求めていると思う。
    そういう意味でもベデフィルとマンガフィル(マンガ好き)は違うから、
    これからは日本のマンガフィルじゃない人達がBDを気に入るかもしれないわね。
    BDではキャラクターよりもストーリー全体や、絵の構図に重点がある場合が多いから」

グェン 「全部は無理だと思う。とくに政治的なものとか、時代背景とか予備知識が必要なものは
     特別買おうとは思わないだろうし。わたしは個人的にだけどブログ発のタイプもいけると思うな」

加奈絵 「この『ピノキオ』とかは装丁もかわいいし、いいと思います。
     BDはどれも細部までのデザインにこだわりが見えますよね。
     オシャレなものが好きな人も気に入るんじゃないかな」


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▲日本語版『ピノキオ』


奈々子 「ただ値段はホントに高いですね......」

グェンクロ 「高い!

グェン 「フランスでもBDは安くはない〔※5〕けど、
     マンガはどんなに高くても8ユーロ(800円弱)。日本のBDは高すぎるわ」



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奈々子 「もう少し安いタイプがあったら、入門書として入り込みやすいかもしれないです。
     それから絵が好きで、物語が好きでって理由で買う人も増えるかもしれないし」

グェン 「悲しいけど、今後フランスのBD市場は減っていくかもしれない。
     日本もそうなのかもしれないけど、本自体を読もうという人が減っているから。
     でも日本では、奈々子も言ったように、まだまだ色んなタイプのBDがあるんだから、
     もう少し手に取りやすい値段のものを売り出してみてもいいんじゃないかな。
     高校生は無理だけど、大学生以上の層で買う人が増えていくかもしれないわ」


―なるほど、当面の大きな課題はやっぱり値段、ということですね(笑)。
素晴らしい色彩美や緻密な物語構成といったBDの魅力を一般の方にも広く知ってもらうためには、
日本の市場に合ったスタイルというのを今後模索していく必要もあるのかもしれません。

ちなみにフランス人がBDに馴染めたのも、タンタンやアステリックスといったクラシックで大人が子供に読み聞かせることもできるタイプが身近だったからだとか。読み聞かせをする保護者層に、絵本とは別物のコミュニケーションツールとして知って頂くことで別の可能性も広がりそうです。

貴重なご意見、そしてご協力ありがとうございました!



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(執筆・翻訳:林 聡宏)
(取材協力:専修大学 生田キャンパス)


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【注釈】

※1 - どちらもシンプルな絵柄が特徴の日常生活を描く若い女性作家。前者はそのキュートな外見と赤裸々で時に自堕落な内容から、ブロガーとして若い女性を中心に人気を博した。

※2 - 『臨死!!江古田ちゃん』美人だが、裸族であり、且つ自堕落、自由奔放すぎるその性格により、周囲から浮いてしまう女性の物語。

※3 - 今回例としてあがったのはベルギーのBD誌最大手『スピルー』。現在も各号10万部程度発刊中。

※4 - 『les monstres de Mayuko』、『Le goût du chlore』、共に未邦訳のBD。前者は農耕時代の日本を舞台とした逆輸入もの。少女マユコがキツネとタヌキの像に雪玉をぶつけて遊んでいたところ、その夜高熱にうなされ、キツネと名乗る妙な妖怪につれられ、現実とも冥界ともつかぬ世界から母の元への帰還を試みる。後者は巻末までほぼ全てをあるプール内を舞台に描く異作。整体師に健康を危惧された主人公が水泳を薦められ、通うようになったプールでのある女性との淡い恋模様を描く。

※5 - 1,000~1,500円程。安いものは500円超。愛蔵版等を除いた大型のものでも2,500円を超えることは珍しい。


☆また、今回話題としてあがった各ブログタイプのURLも掲載させて頂きます。ご参考までに。

●ペネロペ・バジュー/Pénélope Bagieu
http://www.penelope-jolicoeur.com/
●マルゴー・モタン/Marugaux Motin
http://margauxmotin.typepad.fr/
●バッコ/Pacco
http://pacco.fr/
●ローレル/Laurel
http://bloglaurel.com/coeur/



COLUMN

6月新刊『メタ・バロンの一族』(上)/歴代メタ・バロン一挙紹介!


ホドロフスキー×ヒメネスのSFコミック『メタ・バロンの一族』上巻が
現在、好評発売中です。


metabarons_cvr.jpg   メタ・バロンの一族 上

  アレハンドロ・ホドロフスキー[作]
  フアン・ヒメネス[画]
  原正人[訳]

  B5変型、304ページ、並製、オールカラー
  定価:3,150円(税込)
  ISBN 978-4-7968-7119-8

  ※下巻は2012年9月下旬発売予定!

  Gimenez & Jodorowsky, La Caste des Métabarons,
  © Les Humanoïdes Associés, SAS - Paris, 2012


今回は、
メビウス×ホドロフスキーの『アンカル』のスピンオフシリーズと言うけれど、どんな話なの?
『アンカル』を読んでいないのだけど、メタ・バロンって何?

という読者の方々のために、

メタ・バロンとはそもそもどういうキャラクターなのか?というところから、
一族に伝わるイニシエーション(通過儀礼)、歴代メタ・バロンをご紹介していきたいと思います。




■メタ・バロンとは何か?



そもそもメタ・バロンとはどういう人物なのでしょうか?

メタ・バロンが最初に登場したのは、『アンカル』第1章での下記のシーンです。


0711_01.jpgのサムネール画像   『アンカル』
  第1章「闇のアンカル」より


メタ・バロンは宇宙一の賞金稼ぎで、最強の殺し屋
金さえ積めば、確実に仕事をこなしてくれる無敵の傭兵として人々から恐れられ、
各地で殺戮劇を繰り広げては、宇宙にその名を轟かせていましたが、
ある時から、難攻不落の秘密基地「メタ要塞(バンカー)」に閉じこもり、伝説的な存在となっていました。

やがて彼はさえない私立探偵のジョン・ディフールと出会い、
謎の生命体アンカルを巡る宇宙抗争に巻き込まれていくのですが、
この『アンカル』で、メタ・バロンは主人公以上の活躍を見せて人気を博し、
本編では語られなかった彼の過去が、
アンカルの秘密(Les Mystères de L'Incal)という『アンカル』の解説本に
スピンオフ短編として収録されることになります。


0711_02.jpg
▲短編『ソリューンの誕生』より(『アンカル』収録)




この短編で初めて、「メタ・バロン」というのが一族に代々受け継がれる称号であり、
彼らの一族に伝わる過酷なイニシエーション(通過儀礼)の存在が明らかになります。

そのイニシエーションとは、以下の2つ。


一、メタ・バロンの一族は、一族の証として、身体の一部を破壊しなければならない。

一、メタ・バロンの名を受け継ぐにあたって、
自らの手で父親を殺さなければならない。



なぜこのようなイニシエーションが行われることになったのか?
なぜメタ・バロンは代々殺し屋の一族として生きていくことになったのか?



短編の発表により、メタ・バロンをめぐる謎はますます深まることになりました。
その全貌を解き明かすために作られたのが、
本作『メタ・バロンの一族』シリーズです。




■初代からメタ・バロンから最後のメタ・バロンへ



『アンカル』に登場するメタ・バロンは実は5代目のメタ・バロン。
つまり時系列的には、『メタ・バロンの一族』は『アンカル』よりも過去の物語で、
作品自体も、まったく独立したストーリーになっています。

『メタ・バロンの一族』では、初代メタ・バロンから最後のメタ・バロンまで
5代にわたって脈々と連なる一族の歴史が語られています。



まず最初に登場するのが
初代メタ・バロン
オトン

0711_03.jpg

オトンはもともとは宇宙を股にかけて活躍していた海賊
辺境の惑星マルモラを支配するカスタカ一族に婿入りし、一男を儲けますが、
やがて一族が守ってきた秘密をめぐって戦争が勃発します。
その結果、一族を皆殺しにされ、息子とただ二人、生き残りますが、
その息子バリを不慮の事故で失ってから、彼の運命は狂いはじめることに......。



そして、紆余曲折を経て誕生した
2代目メタ・バロン
アグナル

0711_04.jpg

彼はなんと、生まれながらにして「重さがない」メタ・バロンです。
父母を失ってから、復讐を心に誓い孤独な日々を送りますが、
銀河一の美女オダとの出会いをきっかけに、
本人の預かり知らぬところで、ある罪を犯すことになります。
このアグナルが犯した罪をめぐる驚愕のエピソードは、
メタ・バロン一族が「呪われた一族」と称されるゆえんでもあり、上巻の見どころの一つです。



次に登場するのが、一族の歴史上最も卑劣な男とされる
3代目メタ・バロン
テット・ダシエ(鋼の頭)

0711_05.jpg

左側の、鋼鉄の仮面をかぶったような人物がテット・ダシエです。
奇妙な名前は、彼の誕生時のエピソードに由来しています。
上巻では、このテット・ダシエの衝撃の誕生秘話から
イニシエーションである父親との対決に臨むまでが描かれます。



このテット・ダシエの生涯については下巻で詳しく語られることになりますが、
彼は、一族の中でも最も奇想天外な人生を送る男で、
作者のヒメネスとホドロフスキーも一番愛着を持っているキャラクターだと述べています。


続いて、下巻で登場するのが4代目、そして最後のメタ・バロン。



4代目メタ・バロン
アゴラ


0711_06.jpg

彼は、特殊なキャラクター揃いの一族の歴史の中でも
特に特殊な事情を抱えた、前代未聞の存在と言えます。
スピンオフ短編『ソリューンの誕生』で、
現在のメタ・バロンにイニシエーションを行っていた父が、何を隠そうこのアゴラなのですが、
まさかそんな秘密があったとは......と驚愕すること必至です。



5代目メタ・バロン
サン・ノン(名無し)


0711_07.jpg

このサン・ノンこそが、『アンカル』にも登場した現在のメタ・バロン
実はこの『メタ・バロンの一族』は、
メタ・バロンの忠実な召使いロボット、トントが同じくロボットであるロタールに話して聞かせている
「昔話」という体裁をとっているのですが、
ここで舞台がようやく現在にリンクすることになります。




ネタバレになるので、
ここでは極力、核心部分には触れないようにして各キャラクターをご紹介しましたが、
各メタ・バロンごとに、予想もつかないような驚愕の展開が待っています。



はたして、メタ・バロンの一族の呪われた物語は
どのような結末を迎えるのか?


神話や系譜学を取り入れた、まさにホドロフスキーの本領発揮ともいえる世界観と、
まるで映画を見ているような緻密で美しいヒメネスのアートワークで綴る、
壮大なスペース・サーガ、ぜひ本編で体験してください!




アンカル表紙画像.jpg   未読でも充分楽しめますが、
  こちらも名作なので、あわせてぜひ ↓



  アンカル

  アレハンドロ・ホドロフスキー[作]
  メビウス[画]
  原正人[訳]

  B5変型、336ページ、上製、オールカラー
  定価:3,990円(税込)
  ISBN 978-4-7968-7083-2

  Mœbius & Jodorowsky, l'Incal, version classique
  © Les Humanoïdes Associés, SAS - Paris, 2010




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